免疫システムの過剰反応や誤認識が、アレルギーを引き起こしている

免疫システムは、体を守るための生体防御反応として、大切な機能なのですが、通常は無害な異物に対しても「これは有害な物質だ!」と異常な反応をして攻撃してしまうことがあります。それが、アレルギー反応(過敏性反応)です。
よくみられるアレルギー反応には、アレルギーの原因物質(アレルゲン)にすぐに反応する即時型アレルギー反応と、発現に1~2日かかる遅延型アレルギー反応があります。即時型アレルギー反応では、免疫システムが最初にアレルゲンに接したときに、「特異的免疫グロブリンEーgE)」と呼ばれる抗体がつくり出されます。このーgEは、皮膚や粘腹のマスト細胞の表面の丘レセプターに結合してアンテナのようにアレルゲンと反応すると、ヒスタミンなどの化学物質を放出します。そのために、かゆみや炎症を引き起こします。ーgEは、もともと寄生虫などのあきらかな敵に対して免疫反応を起こすのですが、身近にあるダー一や花粉、化学物質などを「敵」と勘違いして、異常なアレルギー反応を起こすことがあります。
原因はよくわからないけど、いつの間にか「かゆくなる」「発務ができる」というときには、遅延型アレルギー反応(細胞性免疫反応)が疑われます。
皮膚トラブルの場合には、アレルギー性接触皮膚炎がよく知られています。これは、特定の物質をT細胞が抗原と認識(感作)すると、再度その物質が体内に侵入(チャレンジ)したときに、それに対してT細胞が活性化して炎症が起きる反応です。原因となる物質にふれてから1~2日後に発赤や発修、腫れといった症状のピークがあらわれるほか、かゆみが強く、接触した部位のまわりに炎症が広がるのが特徴です。症状が軽い場合は、それ以上原因物質とふれたいようにすれば、1週間程度で治まっていきます。しかし、かくことによって症状が広がるほか、発熱したり、全身がだるくなったりするなどの症状があらわれることもあります。
健康な皮膚の見分け方として、皮膚表面の「明値」を測ることがあります。健康な角質層組織の表面は引4・5~6・0の弱酸性です。弱酸性の皮膚表面では表皮プドウ球菌などの皮膚常在菌が安定して生息し、病原菌の繁殖を防ぎ、外部の刺激から皮膚を保護しています。常在菌は皮脂をグリセリンと脂肪酸に分解し、保湿を高め、皮膚表面を弱酸性に保っています。「菌」というと、「悪いもの」「汚いもの」というイメージを受けてしまいますが、体によい作用をもたらす菌もたくさん存在しています。常在菌とは、私たちの体内に存在している細菌(微生物)のことです。その数は膨大で、腸内には100兆個、皮膚には1兆個以上が棲息するといわれています。それぞれの場所に適した種類の常在菌が、私たちの体によい作用をもたらしています。しかし、皮膚の「汚ればったし」「濡れつばたし」「こすれつばたし」という「3つのばなし」があると、皮膚の常在菌が異常増殖をして皮膚トラブルをまねきます。

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免疫システムによって、細菌やウイルス、がん細胞を攻撃する

たんらかの原因でバリア機能が低下しても、皮膚には「免疫システム」が備わっています。免疫とは、体内に浸入した異物を「非自己」と認識して、体から排除する生体防御反応です。外部から侵入した細菌やウイルス、あるいは体内で発生したがん細胞、移植された臓器や組織などを常に監視し、「敵」として撃退する免疫システムは、実に精巧です。その役割の中心となってはたらいているのが、血液中の白血球群です
免疫には、「自然免疫」と「獲得免疫」という2種類があります。自然免疫は、敵を無差別に攻撃する、生まれたがらに持っている抵抗力といえます。獲得免疫は、敵を特定し、その敵に合った武器(抗体)をつくって攻撃する後天的な免疫です。これを活用したものが予防接種です。自然免疫では力バーできないときに、高度な獲得免疫で集中攻撃します。
免疫システムは、常に私たちが風邪をひかないように細菌を退治したり、がん細胞を死滅させたりしたがら守ってくれる、いわば「ボディーガード」なのです。
皮膚のバリア機能の損傷が著しい場合、皮膚が知覚過敏になる「敏感肌」になることがあります。ちょっとした刺激でも過敏に反応して、かゆみを感じやすくなります。本来、侵入したいような物質が透過して皮膚に炎症を起こすのです。
敏感肌の症状として、ムズムズするようなかゆみ、ヒリヒリした痛みなどがあります。また、肌あれ、ニキビ、吹き出物、かぶれなどが悪化し、皮膚が炎症を起こすことで、顔の皮膚が赤くみえる「赤ら顔」になることがあります。赤ら顔は、過敏症やアトピー性皮膚炎などで起こしやすい症状のひとつです。
敏感肌になるおもな原因として、次のようなことが考えられます。
●間違ったスキンケアでバリア機能が損傷している。
●アレルギー体質やアトピー性皮膚炎など、免疫システムの過剰反応によるもの。
●顔をさわる、頼杖をつく、鼻をこする、目のまわりをかくなどの癖がある。

質層にある「バリア機能」部角外部から刺激を防ぎ、内部の水分を守る

皮膚のいちばん外側にある「表皮」は、絶えず新しい細胞がつくり出され、一定のサイクルで生まれかわっています。表皮は、外側から「角質層」「類粒層」「有職層」「基底層」の4つの層に分かれています。

基底層では、毎日、ケラチノサイトという角化細胞が増殖(細胞分裂)し、基底層→有棘層→類粒層→角質層の順で、皮膚の表面に押しあげられていきます。角質層では核のたい角質細胞となって、バリア機能の役目を果たし、その役目を終えると角片としてはがれ落ちていきます。この角片が、体の「堀」や頭の「フケ」になります。

この皮膚の新陳代謝を「ターンオーバー」と呼びます。すり傷などの傷痕、日焼けした皮膚、かゆくてかきこわした皮膚が、時間が経てば、きれいな皮膚へと回復するのは、ターンオーバーによるものです。その周期は、年齢や体の部位、皮膚の状態などで異なります。

ターンオーバーの周期が乱れることで、皮膚トラブルが起こりやすくなります。

皮膚は、体と外界との境界にあることから、防御壁(バリア)の役割を果たす「バリア機能」が備わっています。バリア機能には、ふたつの意味があります。ひとつは、細菌やウイルスなどの病原体、紫外線、気温変化、化学物質など、外部からの異物の侵入や刺激を防ぐこと。もうひとつは、体内の水分が失われたいように保ち、守ることです。皮膚の表面は、角質細胞が覆っているため、多少の外傷では皮膚が損傷するようなことはありません。しかし、火傷などで全身の皮膚の約3分の1以上がダメージを受けると、体内水分が失われ、死に至ることもあるほどです。バリア機能を担っているのが、表皮のいちばん外側にある「角質層」です。

角質層に備わっている3つの保湿要素

皮膚のバリア機能は、次の3つの保湿要素によって成り立っています。

●角質細胞同士をつなぐ「角質細胞間脂質」主成分のセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などが、水分層と脂質層が交互に重なるラメラ構造をつくって、異物の浸入と水分の蒸散を防いでいます。

●角質細胞内にある「天然保湿因子」たんばく質が分解されてできたアミノ酸が主成分です。アミノ酸は、皮膚の潤いの素になる成分で、水分をつかまえて離さないという性質があります。

●角質層表面を覆う、天然クリームの「皮脂膜」汗と皮脂が混ざり合ってできた皮脂膜は「天然クリーム」ともいわれ、薄いベールを表面に覆って、水分の蒸散を防ぎます。皮脂膜は弱酸性なので、殺菌作用も備わっています。脂が少なすぎると乾燥肌になり、多すぎるとニキビや吹き出物の原因になります。

皮膚のしくみと、そのはたらき

汗腺は、皮表に汗を分泌する器官です。ほぼ全身に分布する「エクリン汗腺」と、特定の「アポクリン汗腺」があります。エクリン汗腺は、体温調節という重要なはたらさを担っています。体温が上昇すると全身に発汗が起こります。エクリン汗腺は手の
えきむひら、足底、勝高に多く、緊張したり(情緒性発汗)、辛いものを食べたりしたとき(味覚性
発汗)などにも発汗します。「汗をかいたた」と感じたくても1日約1り、真夏やスポーツ時などでは1日3りもの発汗があります。一方、アポクリン汗腺から出る汗は、精神的な緊張や不安などがあるときに分泌されます。
エクリン汗は、大部分が水分です。その水分と微量に含まれている天然保湿因子により皮膚表面は適度な湿り気を保っています。アポクリン汗は、たんばくや脂質を多く含みます。基本的には、汗は無色透明で無臭ですが、皮膚常在菌によって成分が分解されると、臭いが発生します。
爪は、表皮の角質が板状になったもので、指先の背側のみにあります。手と足のそれぞれの指先を保護する役割を果たしています。骨のたい指先の先端部分は、すべて爪が支えています。手に爪があることで、小さな物もうまくつかめる、細かい作業ができるのです。足の爪は、指先での動きが少ない代わりに、体重のバランスを保ったり、歩いたりするときに、爪先に力を入れるという重要なはたらきをしています。
爪は表皮から分化したもので、硬いケラチンでできた3層構造をしています。爪は爪の根元にある爪母でつくられます。健康な人では、1日に約0・1冊ずつ伸び、爪全体が生まれ変わるのに半年ほどかかります。
爪も全身の皮膚同様、外部からの刺激や栄養状態、内臓疾患などの影響を受けると変化します。そのため爪の状態をみることは、体調不良や病気などを知る、ひとつのバロメーターにたります。皮膚は、外部から異物や刺激を認知する手段としての動物的感覚とともに、触覚、痛覚、温覚、冷覚、圧覚、かゆみという、見えたい情報を受け取る感覚器官でもあります。各情報に対して皮膚には受容器(左図)があり、高感度なセンサーとしてはたらいています。
また、私たちは皮膚をふれ合わせることによって、コミュニケーションを図ろうとします。赤ちゃんの場合は、お母さんの愛情を感じ取るために用いるのが皮膚なのです。十分な愛情は言葉や表情に加えて皮膚感覚から伝わり、それが赤ちゃんにとって心地よい刺激となって、脳を効率的に成長させることができるのです。人と人とのスキンシップは、人間関係をより親密にするうえで、大切な行動といえます。
五感のうち、視覚、聴覚、味覚、嗅覚は、目、耳、舌、鼻という特定の感覚器によって情報が集められるのに対して、触覚だけは皮膚全体が感覚器となります。このことから、皮膚は「体表を覆う脳」といわれるほどです。
顔面や手のひら、足底には、神経末端が多く分布していて敏感です。また、乾燥肌やよく
かいている部位では、自由神経終末が角質層直下まで伸びていて、刺激を感じやすくなっていることが知られています。

表皮、真皮、皮下組織、皮膚は「人体最大の臓器」である

私たちの体全体をおおう皮膚は、人体最大の臓器です。「皮膚も臓器なの?」と驚くことでしょう。臓器というのは、特定の形態や機能を持つ器官のことです。皮膚も脳や心臓、肝臓、腎臓、胃腸などと同じ臓器なのです。皮膚は、皮膚層の「表皮」「真皮」「皮下組織」と、皮膚付属器として「爪」「毛」「皮膚腺(脂腺、汗腺、乳腺)」を合わせたものの総称です。爪も髪の毛も、表皮の細胞が変化したものです。皮膚の厚さは、部位によって厚さは異なります。平均すると約2闘、表皮になるとわずか0・2m程度の薄い膜です。皮膚の最上層を覆っている角質層(Bページ)はラップフィルムより薄いのです。皮膚の総面積は、成人の場合には約1・6mで、畳1枚分の広さに相当します。皮膚の重さは、体重の約2%にあたります。体重2gの人であれば、8%になります。内臓の中で最も大きい肝臓は、体重の約2%(体重2gであれば1%)ですから、皮膚がいかに大きい臓器であるかがわかります。
皮膚は、臓器が外に出たいように体全体をパッケージのように包み、体の形を維持するほか、外部からの刺激保護や体温調節、知覚などをつかさどるはたらきをしています。皮膚は外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」という3つの層から構成されています。表皮は、いちばん外側にある薄くて丈夫な層です。皮膚の潤いを保つとともに、外部から異物の浸入や刺激を防いでいます。皮膚の内側にある筋肉や神経、血管を外傷から守るはたらきもしています。真皮は、皮膚組織の大部分を占めていて、皮膚本体ともいえます。真皮には強靭な「コラーゲン線維」の束が網状に存在し、その間をゼリー状の「基質」が組織液を含んで満ちています。これに「エラスチン線維」も加わって、弾力や柔軟性を与えています。このほか、真皮には免疫細胞(組織球、肥満細胞など)や、毛包、皮脂腺、汗腺、血管、リンパ管、神経などがあり、生理的に重要なはたらきをしています。
皮下組織は、皮膚の最も内側にある組織です。大部分が皮下脂肪で、その中に、動脈や静脈といった太い血管が通っていて、皮膚組織に栄養を届けたり、老廃物を運び出しています。また、エネルギーを脂肪という形で蓄え、外力に対してクッションのように内臓や骨、筋肉などを保護しています。
皮脂腺(脂腺)は、毛に付属する皮脂を分泌する器官です。手のひらや足の裏を除いた、ほぼ全身の皮膚に分布しています。皮脂は、汗と混ざり合って皮脂膜をつくり、皮膚を保護しています。皮脂は、水分の蒸散を防いで皮膚や髪に潤いを与え、光沢や滑らかさも与えます。皮脂の分泌が多いのは、頭部や顔、厩高(わきの下のくぼみ)、外陰部、胸、背中の中央に沿った部位など、脂腺が発達しているところです。最も多いのが、頭皮と「Tゾーン」と呼ばれる顔の額と鼻の部分です。皮膚の分泌量は性ホルモン(男性ではテストステ口ン、女性では副腎アンド口ゲン)に影響され、性別や年齢、季節、食べ物などによって左右されます。一般に、女性の場合は思春期から%歳代、男性の場合には思春期から最大となり、以後は加齢とともに減少します。
皮脂は多すぎると、皮膚が汚れやすくなったり、皮脂そのものが刺激になったりして、ニキビなどができやすくなります。唇や陰部には毛を欠く独立脂腺があります。

イチゴを食べすぎるとなぜ、かゆくなる?

12〜4月には、各地で「イチゴ狩り」が盛んに行われます。甘酸っぱくておいしいイチゴですが、イチゴを食べすぎると、口のまわりがかゆくなることがあります。「口が痛い」や「喉がチクチクする」などの症状があらわれたときは食べるのをやめ
て、手や口を洗ったり、払tいたりしてください。症状が悪化しないか、しばらくは注意深く様子をみます。ひどくなるような
ら皮膚科を受診しましよう。
ふだんはイチゴを食べてもかゆくならない場合には、食べすぎることによって、非アレルギー性のかゆみが起こったのです。イチゴは、かゆみの原因物質であるヒスタミンを、比較的多く含むとされています。そのため、たくさん食べるとかゆくなるのです。このほか、トマト、ナス、ホウレンソウ、タケノコ、ヤマイモ、そば、卵白、豚肉、サバ、マグロ、イカ、エビ、アサリほどの魚介類、コーヒー、チョコレート、ワイン、ビールなどが、ヒスタミンを比較的多量に含むとされています。
これに対して、アレルギー性の反応もあります。食べた30分以内ぐらいに、口のまわりがかゆくなる、赤いブツブツができる、唇や舌、目が腫れたりします。さらに、議麻参、下痛、幅吐など体全体にアレルギー症状としてあらわれる場合もあります。稀に、呼吸困難やアナフィラキシーショックを起こすこともあるので、注意が必要です。
果物や野菜、ナッツ類には、アレルギーの原因となるものが多くあります。特にピーナッツ、アーモンド、ソバ、メロン、バナナ、リンゴ、モモ、ナシ、クリなどはアレルギー症状を起こしやすいことが知られています。

皮膚のかゆみは、かかたいでいれば自然に治る

そうはいっても、かかずにはい
られたいのが、かゆみです。かくことで、一時的にかゆみは解消されますが、けして治まったわけではありません。逆に、かけば、かくほど、かゆくたるという「かゆみの悪循環」に陥ります。かくことで、さらにその部分の炎症が強まります。かくことで誘発される炎症(湿参、皮膚炎)は、体の細胞や組織が損傷を受けたときに、それを取り除いて再生しようとするための生体防御反応のひとつです。抗生物質も抗真菌薬もない時代には、炎症が自己防衛の役割を果たしていましたが、現在ではむしろ不利益のほうが多いといえるでしょう。皮膚を傷つけないためには炎症を抑制する治療が重要です。かゆみを止めるには、抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)の内服および副腎皮質ホルモン(ステ口イド)外用薬を中心とした皮膚科的治療が行われます。かゆみの悪循環を断ち切るためには、まずは、かかないこと、そして早い段階から治療をはじめることが大切です。
緊張するときやストレスがあると、リポリかいてしまう「かき癖」
通常、撮破行動はかゆみによって誘起される反射的行動です。しかし、かゆみがないのに無意識にポリポリかいてしまう「かき癖」という、やっかいた播破行動があります。ば、職場や家庭などで自分の思うようにいかずイライラしたときに、頭をかいたり、髪の毛を引っばったりする人がいます。また、プレッシャーを感じているときに、鼻や頼をかいたり、目をこすったりと、顔や体をせわしくなくさわったりする人もいます。こは、体にふれることで、自分の気持ちを落ち着かせようとしているといえます。
かき癖は、ストレスが大きくなるほど工ス力レートしていき、頭皮をかきむしる、髪の毛を抜く、顔を叩くといった過剰行動になっていきます。つまり、痛みの感覚を得ることにより、一瞬でもストレスが打ち消されるのです。女性に多くみられる「洗いすぎ、こすりすぎ、保湿しすぎ」という過剰ケアは、ある種の「自傷癖」に似ています。再発を繰り返したりする場合は、かき癖を疑ってみましょう。
近年、「大人アトピー」と呼ばれる「成人型アトピー性皮膚炎」が増えていて、難治化する傾向があります。その患者さんの播破行動を考察した結果、情動やストレスが播破行動を誘発していることがわかっています。
かゆいから、かくのではなく、「イライラするとかく」「気がつくとかいている」という気持ちでかく状態があり、それが習慣化して、「帰宅後に必ずかく」「いつも同じようにかく」「かきだすと止まらない」と、日課のように行われています。さらに、「気がまされる」「ほっとする」「すっきりする」という心地よさ、つまり精神的快楽もあることから播破行動は繰り返されます。1回の播破時間は平均5~B分、時には%分、4時間にも達するという人もいます。つまり、播破行動がストレス解消の手段となっているのです。播破行動は、習慣化して精神的依存が強まると、一種の「アディクション(暗艦)」となります。このように、習慣的にかくことにはまってしまうことを「嗜癖的播破行動」といいます。

皮膚は心の状態がわかるバロメーター!

皮膚は、内臓疾患を知らせるだけでなく、心の状態を教えてくれます。たとえば、恥ずかしくて赤面したり、恐怖のあまり蒼白になったりします。寒いときだけでなく、感動しても怖くても鳥肌は立ちます。緊張や不安があると首や肩の筋肉がこわばり、額や鼻、背中、手のひらに冷や汗をかきます。照れたときもイライラしたときも頭をかいたりします。
このように、喜び、悲しみ、不安、驚き、怒り、恐れたどの情動が、皮膚に出るのです。情動というのは、急激に起こる一過性の強い感情の変化です。その人に衝動的な行動をとらせてしまう欲求ともいえます。情動によって、交感神経の緊張が続くと、呼吸、循環、消化、分泌などの生理機能が変調し、皮膚に悪影響を及ぼします。
治療をしてもよくならない場合、要因のひとつとして「心の悩み」があります。アトピー性皮膚炎などでは、ストレスが原因となることが多いのです。まじめた人ほどストレスを受けたとき、うまく対処できずに播破行動に走ってしまい、症状を悪化させます。
かゆみには、「末消性のかゆみ」と「中枢性のかゆみ」のふたつのタイプがあります。「どこがかゆい?」と間かれて、「ここがかゆい!」と、かゆい部位が特定できる場合は末消性のかゆみです。なんらかの刺激を受けることで、皮膚に存在するマスト細胞(肥満細胞)と呼ばれる細胞に、19E抗体、サイト力イン、神経ペプチドなどの物質が作用し、かゆみの原因物質であるヒスタミンが放出されます。このヒスタミンが、かゆみや痛みを感知する知覚神経に作用し、その刺激が脳に伝えられます。一方、体全体がむずがゆいけれど、「どこがかゆいのか、よくわからないD」と、かゆい部位が特定できない場合が、中枢性のかゆみです。かゆいと感じる部位には、炎症や発参などの皮膚症状は生じないのが特徴です。中枢性のかゆみには、オピオイドペプチドという神経ペプチドが関係しています。
かくことによって、皮膚になにが起こっているの?
皮膚をかくことで、皮膚の下でなにが起こっているのか、具体的にみていきましょう。
かくことで少なくても皮膚バリアの損傷、炎症性サイトカインの放出、軸索反射という3つの変化が起こり、かゆみも皮膚病変も増悪します。第1の変化は、皮膚のバリア機能の損傷がいっそう進みます。出血を伴うほどの引っかき傷であれば、角層だけでなく表皮全体が損傷を受けます。第2の変化は、表皮細胞の損傷によってサイト力インという物質が放出され、炎症反応が促されます。サイト力インは、細菌やウイルスが体に侵入したときに、それを免疫細胞に伝え、撃退して体を守るという重要なはたらきをします。かくだけでなくわずかに角層がはがれる程度でも、サイト力インは放出されます。
第3の変化は、軸索反射です。はじめは皮膚の一部がかゆいだけなのに、いつの間にか、その周辺もかゆくたることがあります。この現象の原因になるのが、軸索反射です。神経終末からサブスタンスPなどの神経ペプチドが遊離され、さらに炎症が起こります。

かゆみは、「引っかきたい」という衝動を起こす不快な感覚

かゆみは弱い痛みではない!「似て非なるもの」=子どものころ、蚊にさされたときに、爪で「バッテン」の印をつけた経験はないでしょうか。これは、かゆみを感じにくくしようとする無意識の行動なのですが、新たに強い刺激を与えることで、かゆみを痛みにすり替えるという、理にかたった行動なのです。
また、かゆい部分に熱いシャワーをあてると気持ちいいと感じるのも、皮膚に熱い(痛い)という強い刺激を与えることで、かゆみを抑制することにつながります。かゆみというのは、痛みを与えることで一時的に忘れられる感覚といえます。しかし、悪化するケースが多いので、注意が必要です。
実は、これまで「かゆみというのは、弱い痛みである」ととらえられ、痛みを伝える神経経路に流れる信号が弱いときにはかゆみ、強いときには痛みとして感じるというのが通説でした。ところが、近年の研究により、かゆみを伝える神経線維があることがわかり、痛みとは違った皮膚感覚であることが解明されたのです。
具体的には、かゆみは全身の皮膚、まぶたの表裏と白目、鼻の粘膜にしか発生せず、内臓には痛みは起こってもかゆみは起こりません。かゆみと痛みは、似て非なるものなのですが、まったく無関係かというとそうでもなく、かゆみと痛みとは相互に密接にかかわっています。かゆみという感覚は、まだまだ解明されていないことが多い分野です。
かゆみを痛みにすり替える皮膚が、心臓、肝臓、腎臓、胃腸、肺などの臓器と大きく異なるのは、病変が自分自身の目で見てわかるところです。
古くより皮膚は内臓の鏡、といわれ、皮膚症状が内臓疾患の異常を知らせるサインになる場合があります。皮膚表面にはじめてあらわれる病変を「発参(皮参)」と呼び、色調が変化する「斑」、隆起がある「丘参」、水分を含む「水病」、臓を含む「臓病」など多彩な形状を示します。皮膚表面の病変が違うというのは、皮膚の下で起きていることも違います。たとえば、糖尿病の場合、約3割の患者さんが、なんらかの皮膚疾患を抱えているといわれます。高血糖の状態が続くと赤ら顔や強いかゆみを伴ったり、免疫機能が低下すると水虫などの感染症を発症しやすくなったりします。悪化すれば、感覚神経にも異常があらわれ、足の靴ずれや小さな傷から細菌感染しても気づかず、皮下組織まで腐って壊痕になることがあります。日ごろから皮膚症状をチェックすることが大切です。

かゆみは皮膚の異常を知らせるシグナル

かくのは体を守るための本能です。
ムズムズする、かゆみというのは、非常にやっかいな皮膚感覚です。
かゆみは、「引っかきたい」という衝動を起こす不快な感覚と定義されています。この定義からもわかるように、かゆみには皮膚をかくという「行動」が伴うのが、大きな特徴となっています。
では、なぜ人はかゆくなるとかきたくなるのでしょう。
私たちの体には、もともと生命を脅かす伝染病を媒介する昆虫、毒、ノミ、寄生虫、病原体などからの攻撃(侵入物)をかゆみとして認知し、播破行動を誘起することによって、侵入物を排除するという。生体防御反応、が備わっています。
このことから、かゆみは「皮膚の異常を取り除いてほしい」と知らせてくれるシグナルといえます。そして、播破行動は「自己の体を守るため」の本能であると考えることができるのです。しかし、かゆみでは、基本的に命を落とすような危険がないため、どうしても軽
視されがちです。しかし、かゆみが強まると、イライラしたり、眠れなかったりするたど、かゆみがストレスになることもあります。また、播破行動により皮膚に炎症が起こり、皮膚の症状が悪化します。とくに顔のトラブルがひどくなると、人前に出るのをためらってしまうことも
身体的にも精神的にも大きなダメージをもたらすことになります。最近、脳科学や医学の研究が進み、かゆみのメカニズムが解明されてきています。それと同時に、激しいかゆみが伴うアトピー性皮膚炎など、難治性の症例に対する皮膚科治療の進歩への期待が高まっています。
あります。かゆみや皮膚症状の悪化によって、かくことは快楽を伴う。
脳内化学物質のドーパミンが分泌されるかゆくたいところをかくと「痛み」として感じるのに、かゆいところをかくと不思議と「気持ちがよい!」と感じるのは、だれしも経験しているのではないでしょうか。では、なぜ、人はかゆいところをかくと気持ちよくなるのでしょう。
かゆいところをかくことで、快楽ホルモン、と呼ばれるドーパミンが分泌されていることがわかっています。これは、自ら皮膚をかきこわして損傷させた、播破行動に対する成功報酬、ととらえることができます。私たちは「ある行動をとる」「ある物質を摂取する」と、脳の中で「報酬系」と呼ばれる部分が強く反応しています。この報酬系の中に、ドーパミンなどが多く存在しています。さらに、ある行動や物質と快楽との結びつきがあまりに強烈で、報酬系にスイッチが入った場合は、条件反射のように条件づけが形成されてしまい、自分の意思ではその行動や摂取をやめることができない「依存症」に陥ってしまうリスクもはらんでいます。